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犬はとても感情豊かな動物で、学習能力も高く、いろいろなことを理解します。どれくらい頭が良いのかというと、動物の世界では人間を除いては、猿の次に知能が高いとされています。また、犬の認知力や問題解決能力は、人の2歳児程度といわれています。
犬の脳と人の脳を比べた場合、人でとくに発達している記憶や思考をつかさどる大脳新皮質の部分に違いがあるものの、情動をつかさどる基本の大脳辺縁系にはあまり違いはないようです。
そこで、人間にとって頭のよくなる食べ物は、犬の頭もよくなる食べ物だと大胆に決めつけて、「犬の頭脳食」をご紹介していきます。
基本はあくまでも「人間の頭のよくなる食べ物」ですから、お忘れなく。一種のパロディーとして、読み物として楽しんでいただければ幸いです。ただし、人間にとっては、間違いなく頭のよくなる食べ物についてご紹介しています。犬よりもまず人間からですかね、やっぱり。
ビタミン・ミネラルは脳の機能に重要
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体に必要なビタミンやミネラルは脳にとっても必要不可欠なものです。ビタミンB類の不足は脳に病的変化を起こしやすいことが知られ、ミネラルの中でもカルシウムは脳機能の活性化に貢献することが知られています。さて、ビタミンやミネラルは脳とどのような関わりを持っているのでしょうか。 |
ビタミンが欠乏すると
人間だけでなく、犬の場合もサプリメントがブームのようですが、むやみにビタミン類をとり続け、ある種のビタミンが過剰摂取されると、思わぬ副作用を招きかねないので注意が必要です。ビタミンは食餌でとるというのがベストです。
特に必要なのはビタミンA、B郡、D、Eです。ビタミンCとKは、犬の場合は体内(腸)で合成することができます。ただし、腸に慢性疾患のある犬は欠乏することがありますから、補ってやらなければなりません。またAとDに関しては過剰摂取は害を及ぼしますから注意が必要です。
体内で合成されない生体活性物質であるビタミン類は、脳の機能にとっても重要な役割を担っています。とくに、エネルギー代謝に関わるビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ニコチン酸またはナイアシン)、神経伝達物質の合成に関与するビタミンB6(ピリドキサール)などのビタミンB類の欠乏は、脳に病的変化を起こしやすいことが知られています。しかも、単独より複数のビタミンが欠乏した場合のほうが障害発生率が高くなります。
一般に、ビタミンが欠乏すると、興奮しやすい、疲れやすい、意気消沈しやすい、神経過敏になりやすい、不安感を持ちやすい、怒りっぽくなりやすい、などの情緒的症状が現われるほか、記憶力や思考力も減退します。しかし、こうした症状が短期間のビタミン欠乏に起因するものであれば、外からビタミンを補給してやることで簡単に治すことができます。もし、そういった症状があるのなら、総合ビタミン剤のようなサプリメントを試してみるのも即効性のあるうまい方法かもしれません。ただ、これはあくまでも急場しのぎで、毎日の食餌内容(手づくりフードやドッグフードの内容など)を根本的に見直して改善していく必要があります。そこで次に各種ビタミンの特質と多く含まれる食品についてご紹介します。
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ビタミンの特質と多く含まれる食品
ビタミンB1
ビタミンB1が欠乏すると脚気にかかりやすいことはご存じの通りです。脚気は単なる足の病気ではなく、脚気は別名「多発性神経炎」と呼ばれる、れっきとした神経系の病気です。当然、脳にも重大な悪影響を及ぼします。
ビタミンB1すなわちチアミンは、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖を完全燃焼させるのに欠かせない栄養素です。また、脳内でブドウ糖代謝に関係していることから、これが欠乏するとアセチルコリンが減少したり、神経細胞の膜構造に変化がもたらされることも知られています。その欠乏が多発性神経炎、すなわち脚気を引き起すのもこうした事情があるからです。
ただし、チアミンは血液・脳関門を通過できるので、欠乏したらすぐに補ってやれば効果が出ます。チアミンすなわちビタミンB1を多く含んでいる食品は牛肉、豚肉、クルミなどのナッツ類、そして大豆などの豆類です。ただし、大豆など豆類は消化されにくので加工されたものを与えるなどの注意が必要です。
ビタミンB3
ビタミンB3はニコチン酸またはナイアシンとも呼ばれ、脳のエネルギー代謝に必須のビタミンです。脳にとっては不可欠な栄養素です。
ニコチン酸が決定的に欠乏すると、人間の場合は「ペラグラ」と呼ばれる痴呆、皮膚炎、下痢を三大特徴とするタチの悪い病気にかかります。普通の生活を送っている限り、そこまで悲惨な状況に陥ることはありませんが、ある程度の欠乏でも、うつ病、不安症、情緒不安定になりやすく、短期の記憶力が極端に減退するケースもあるので注意が必要です。
ビタミンB3をこまめにとるには酵母が最高です。牛肉やナッツ類にも比較的多く含まれています。
ビタミンB6
ビタミンB6は、神経伝達物質の合成に関与しています。このビタミンが慢性的に欠乏すると知能の発育不全が起ります。ビタミンB6は、牛肉や豚肉、魚肉に多く含まれ、野菜や果物にはほとんど含まれていません。また調理中に20〜30%が壊れるのも覚えておきたいものです。
ビタミンB12
ビタミンB12は「抗悪性貧血因子」とも呼ばれるシアノコバラミンのことで、これが欠乏すると、悪性貧血になります。またさらに欠乏状態が高じると脳波に異常が認められるようになり、刺激に対する過敏性が増大し、記憶喪失や幻覚症状といった神経障害が表われることもあります。なぜビタミンB12の欠乏が、こういった障害を起こすのかは、そのメカニズムについては不明です。
レバー、魚貝類、チーズに含まれますが、植物食品にはまったく存在していません。
ミネラルと脳
カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラル類は、体の機能維持のために大切なだけでなく、脳機能の活性化にとってもきわめて重要な栄養素です。
たとえば、カルシウムについてみると、神経伝達物質のノルアドレナリンやアセチルコリンがそれぞれ特有のレセプターと結合すると、細胞内でのカルシウム・イオン濃度が増大することが知られています。細胞内のカルシウム・イオンは、ある種のタンパク質のリン酸化を促進する酵素の活性を高めることで、神経情報のスムーズな伝達を手助けすることが知られています。神経細胞間の情報の疎通がよくなるということは、脳機能の活性化に直接貢献するので、脳にカルシウムをたえず補給してやることが大切になります。カルシウム含有量の多い食品は、干しエビ、煮干し、イワシの丸干し、ひじきなどです。
また、鉄分が欠乏するとどうなるでしょうか。たとえば鉄欠乏症の子どもたちは、新しい学習内容を理解したり覚えたりする能力が、鉄分を十分量摂取している子ども達より劣っていたというレポートがあります。また3〜5歳の子どもで血中のヘモグロビン濃度が低い場合、顕著な注意力散漫が観察されたという報告もあります。この場合、知能指数への影響は否定されています。
さらに、生後6〜18ヵ月の時期に鉄分を十分に摂取できなかった子どもたちには、6〜7歳になってからある種の神経症状が表われ、運動機能にも軽い障害が見られたという報告があります。ただし、鉄分を補給してやることによって、認識機能の改善が可能になったそうです。
これらのレポートからも、鉄分の重要さも十分に理解できます。とくに成長期の子ども達の脳には不可欠です。これがそのまま犬にもあてはまるか否かは不明ですが…。
ビタミンやミネラルは、脳機能の活性化に欠かせないばかりか、不足した場合には機能低下や異常な状態に陥ることは理解していただけたでしょうか。ビタミンやミネラルはバランスよくと与えることが必要です。
※参考引用:「頭がよくなる栄養学」中川八郎著 発行/講談社 |
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犬の頭がよくなる食べ物<1> 脳にとって大切なたんぱく質
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